あんにんです(^^)
第2回の勉強会を、10/9, 21にそれぞれ本郷、駒場で行いました。
今回は、
市川伸一先生の
「教えて考えさせる授業」を創る―基礎基本の定着・深化・活用を促す「習得型」授業設計 (教育の羅針盤)
を元に勉強会をしました。この本では、いわゆるゆとり教育の時期から流行りだした「教えずに考えさせる授業」から、「教えて考えさせる授業」へ転換しようという趣旨の本だと理解しています。
それぞれの言葉や、時代背景をざっと説明しようと思います。
1989年、学習指導要領が改定され、いわゆるゆとり教育が始まりました。この転換の理由はいくつかあるのですが、その中の1つに教師が一方的に教えるのはどうかという反省がありました。簡単にまとめると
・教師が一方的に教え、児童/生徒が受動的に受け入れるだけでは、
-児童/生徒の自主性を摘む
-児童/生徒の創造性が伸びない。
-児童/生徒が学んだことを利用して自ら考える姿勢が身につかない
-そもそも、一方的に言われたことは、吸収率、定着率が低いのではないか
といった感じです。
そこで流行したのが、教えずに考えさせる授業です。これは、初習事項を教える前に、児童/生徒に考えさせ、初習事項を発見させることを狙う授業です。
ちょっとイメージするのが難しいと思うので、例を考えてみます。たとえば、長方形の面積を習い終わった児童に対して、次に平行四辺形の面積を教えるとしましょう。
このとき、教えずに考えさせる授業では、いきなり公式や公式の導出法は教えず、「どうやったら面積が求まるか考えてみよう」と始まります。
教えずに考えさせる授業では、ここからが工夫のしどころで、どのようなヒント、アイテム(折り紙とハサミとか)を駆使するかがポイントとなります。
そして、最終的に上がってきた意見を抽出し、先生が公式としてまとめた後、ドリルなどの演習に入っていきます。
(いわゆる若者のみなさんは、こういうタイプの授業を受けた記憶ありませんか?)
このように、初習事項を教えず、児童/生徒に考え、発見させるのがミソです。この方法では、1989年以前の反省点に対する答えになっているように見えます。
ですが実際には、教えずに考えさせることは非常に困難です。なぜなら、一部のできる子を除いて、本当に初習事項を思いつくことは難しく、考える気力すら湧かないでしょう。また、既に塾でさきどりをしている人にとっては、習ったことを今更考えろと言われても、もう知ってるし、何もすることがないので暇です。
理念は良かったのですがこれが現実なのかもしれません。
反省として出てきたのが、教えて考えさせる授業です。
教えて考えさせる授業では、初習事項は教科書を通して教えてしまいます。その後、ドリルなど演習問題をした後、より高度な問題に対して、みんなで工夫して考えるという時間を設けます。
例えば、次の図の平行四辺形の面積を求める問題が出た時、クラスの児童の答えが、
・3cm × 3cm = 9cm^2
・3cm × 2cm = 6cm^2
の2つに割れることが予想されます。
この場合、正しく答えられた児童だけでなく、誤ってしまった児童も議論に参加できますし、正しく答えを出せた人も、誤っている人に何故誤っているかを自分の言葉で伝えられる必要があります。白熱した、レベルの高い議論が行えるのではないでしょうか。
さて、両者紹介しました。どちらとも、教師が一方的に教え込んだ時の反省を活かし、児童が自主的に参加する場面が用意されています。そこは共通です。
では、両者の異なる点はどこでしょうか。それは、端的に言えば、児童/生徒が主体的に考えるタイミングです。
教えずに考えさせる授業では、初習事項について、自分で考えることに重点が置かれ、時間もそこで使います。一方、教えて考えさせる授業では、初習事項ではなく、その単元に関するより高度なこと(間違った答えはどこで間違えたのか、より応用の問題など)を考えることに重点が置かれ、そこに時間を費やします。
そこを調整することによって、教えて考えさせる授業のほうが、より児童/生徒を巻き込める授業担っているのではないかと思います。
みなさんはどちらのほうが良い授業だと思いますか?
これは個人的な話ですが、僕はおそらく教えずに考えさせる授業を受けた経験があるのだと思います。塾講師として集団授業をしていた時代、同じく教えずに考えさせる授業を展開した記憶があります。ですが今にして思えば、教えて考えさせる授業がよかったなぁなんて思ったりします。早く読んでおけばよかったこの本!←
ですが、利益ばかりではありません。教えて考えさせる授業を創るのは結構難しいのです! 本郷での勉強会では、参加者に、教えて考えさせる授業案を作ってもらうということを試したのですが、なかなか苦戦した模様。。。
僕自身、この勉強会を教えて考えさせるスタイルで展開しているのですが、それも結構難しい!
そんな教えて考えさせる授業の創り方については、まさに今回挙げた文献に詳しいので、興味がある人は是非お手にとってみてください。
例として算数を挙げましたが、数学、理科にとどまらず、国語、社会、体育などでも応用できるようです。(そういう事例もいくつか載っています)
そういえば、喫緊の課題として、この手法を、ダンス練習に応用したいのですが、なかなかどうして、難しい。勉強するだけじゃなく、応用したかったんですけどね。難しい、けど面白い!
そんなこんなパンナコッタで、とりとめがないですが、今回はこんなところで終わりです。アデュー! 次回をお楽しみに!