2016年2月1日月曜日

日本人はなぜ英語が苦手なのか?

はじめまして、ばっふぁと申します。

現在米国のUC Berkeleyに留学していますが、冬休みの間日本に帰国していました。その際、1/13・14に開かれたまるきゅうの集中勉強会に参加しました。久しぶりにまるきゅうの皆さんにお会いできて楽しかったです。また、教育心理学に関する多くのことを学ぶことができました。

さて、その勉強会では「日本人はなぜ英語が苦手なのか?」という題目で発表をさせていただきました。日本人は英語が苦手とよく言われますが、私がアメリカで1年半過ごし、いろいろな国の人と接する中で自分なりに得た結論をまとめてみました。

発表では、日本人が英語が苦手な理由として、以下の3点を挙げました。
  1. 日本語と英語の大きな違い
  2. 日本は他の国ほど英語を必要としていない
  3. 試験偏重の英語教育
以下、これらの理由を一つずつ見ていきます。

(1) 日本語と英語の大きな違い

日本語と英語は根本的に異なる言語のため、日本人にとって英語を学ぶことは困難です。一方、ヨーロッパ人にとっては、英語は自分の母国語と似ているため、日本人よりも英語を学ぶハードルは低いです。これを、英語の言語学上のルーツから検証したいと思います。

言語学によれば、英語も含め、ヨーロッパの言語はインド・ヨーロッパ語族に分類され、どれも共通の祖先をもっているとされます。下の図は、言語間の類似性を視覚化したものです。
インド・ヨーロッパ語族の言語間の距離
https://elms.wordpress.com/2008/03/04/lexical-distance-among-languages-of-europe/より)
英語(ENG)は、インド・ヨーロッパ語族の中でも青で示されたゲルマン語派に属しています。ドイツ語(GER)やオランダ語、そしてデンマーク語、スウェーデン語、ノルウェー語といった北欧の言語も同じゲルマン語派に分類されます。一方で、歴史的に英語はフランス語(FRE)から大量の語彙を輸入しており、オレンジで示されているイタリック語派(あるいはロマンス諸語)の影響も強く受けています。図でも、英語とフランス語は異なる語派に属しながら、かなり距離が近いことが分かります。イタリック語派にはフランス語の他、イタリア語、スペイン語、ポルトガル語などが分類されています。

英語と類似性が高いこれらの言語を話している人々にとって、英語を学ぶことはそこまで困難ではないと考えられます。実際、ヨーロッパ諸国のTOEFL iBTの点数は日本よりも高いです。一方で、日本語と英語は根本的に異なる言語のため、日本人にとって英語は難しい言語です。なので、日本人は英語が苦手なのではないかと私は考えています。

(2) 日本は他の国ほど英語を必要としていない

日本語は世界的にも有力な言語で、日本にいれば日本語でビジネスをしたり、高度な学問をすることができます。一方で、世界には数多くの言語がありますが、家族や友人との日常会話で用いられても、高度なビジネスや学問をするための語彙がなかったり、その言語で書かれた書籍や資料が十分にない場合が多くあります。かつて植民地支配されていた途上国の多くでは、ビジネスや学問には英語やフランス語といった確立した旧宗主国の言語が用いられています。

発表では数多くの国を例として取り上げましたが、ここではインドとアフリカについて紹介します。

インド

インドの公用語はヒンディー語で、準公用語は英語です。それらに加え、22の言語が憲法で指定されており、下図のように地域ごとに異なる言語が話されています。

インドの各地域で話されている言語
(http://titus.fkidg1.uni-frankfurt.de/didact/karten/indi/indicm.htmより)
これらは単なる方言ではなく、全く異なる言語です。そのため、同じ国の中でも異なる地域出身の人と意思疎通をするには共通語が必要になります。ヒンディー語も共通語の一つですが、主にインド北部でのみ話されていて、南部ではあまり通じないそうです。そこで、旧宗主国である英国の言葉、英語が共通語として用いられています。このため学校教育でも、小学校から英語で授業がなされています。

アフリカ

アフリカには土地ごとに固有の言語がありますが、多くの場合、植民地時代の宗主国の言葉が公用語として広く使われています。下図のように、アフリカは主に赤で示された英語圏、青で示されたフランス語圏、そしてサハラ砂漠より北のアラビア語圏に分かれます。

アフリカ各国の公用語
(http://afrographique.tumblr.com/post/4132889815/a-linguistic-infographic-detailing-the-mostより)
アフリカの英語圏の国では、家族や友人とはその地域固有の言語で話すものの、学校では小学校から英語で授業がなされるそうです。私がBerkeleyで出会ったマダガスカル出身の先生は、家族とはマダガスカル語で話すものの、学校でマダガスカル語を教わったことがなく、マダガスカル語を書くことができないため、家族宛ての手紙をフランス語で書いたそうです。

ナイジェリア出身の作家Chimamanda Adichieの話(YouTubeへのリンク)によれば、子供の頃読んでいた絵本はイギリスやアメリカのものばかりだったそうです。絵本が大好きだった彼女は幼くして自分でも絵本を書くようになったそうですが、そこで出てくる人物は白人ばかりで、雪の中で遊び、りんごを食べていたそうです。彼女は自分自身雪を見たことはないし、普段はりんごではなくマンゴを食べるにも関わらずです。

以上、インドとアフリカを例として紹介しました。日本語でたいていのことが事足りる日本と違い、これらの国では英語が切実に必要とされています。そして、学校教育では小学校から英語で授業がなされているわけですから、日本人よりもはるかに英語に馴染みがあるはずです。

(3) 試験偏重の英語教育

皆さんが、もしタイ語やフィンランド語を分かるようになりたいとしたら、どのように勉強したらよいでしょうか?勉強会ではさまざまな意見が出てきました。いろいろなやり方を通じて、だんだん現地の人と分かり合えるようになっていくのだと思います。

さて、タイ語やフィンランド語といった突拍子もない例を挙げましたが、英語も本来は外国語の一つに過ぎないはずです。では、皆さんはどのように英語を学校で勉強したでしょうか?日本では外国語の中でも英語となると、途端に試験とか資格とか一辺倒になってしまい、やたら難しい語彙とか文法とか試験対策に傾倒しているように思います。

受験英語で有名なものとしてクジラ構文というものがあります。

A whale is no more a fish than a horse is a fish.
馬が魚でないのと同様にクジラも魚ではない

しかし、この文章を友人のアメリカ人に言ったところ理解してもらえませんでした。文法的な説明を3分の1ほどしたところで、「あ、そうか... 確かに文としては成り立っている」と反応されました。

さきほどのタイ語やフィンランド語の勉強が生きた言語ならば、このような試験偏重の英語勉強は死んだ言語と言えます。




以上、日本人が英語が苦手な理由を見ていきました。日本語と英語は根本的に異なるので難易度が高く、そのわりに日本では他の国ほど英語は必要とされておらず、そして日本の英語教育は試験偏重で死んだ言語を学んでいるということです。

発表で私は、生きた英語に触れる重要性を述べました。では、我々はどのように生きた英語を学べばいいのでしょうか?勉強会では実にさまざまなアイデアが出てきましたが、その一部を紹介します。

  • 英語を話す集まりに参加する
  • 英語の歌を聴く
  • 日本のマンガの英訳版を読む
  • 日本のことが大好きな外国人に、日本に関する情報をTwitterなどで英語で発信する
  • アニメを観た外国人の反応の実況をYouTubeで観る(英語のコメント欄もいい勉強になる)
  • 英語を話す恋人を作る
  • 外国のスターの追っかけをする

このように、本当は生き生きと英語を学ぶ方法はたくさんあるのです。楽しみながら生きた英語に触れる中で、次第に英語に対する親しみがわき、英語を扱えるようになるのではないでしょうか。

書き始めたらだいぶ長い記事になってしまいましたが、以上、日本人と英語についての考察記事でした。

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